今回は、「大人?子ども?」知っているようでよく分からない「アダルトチルドレン」についてお伝えします。
アダルトチルドレンとは「生きづらさ」を感じている「大人」のことを指します。最近では、「生きづらい」人の例として、とても繊細な人 Highly Sensitive Person という用語をよく聞くようになりましたが、このHSPについては、別のコラムで詳しく取り上げます。
アダルトチルドレンをより正確に定義すると、「アルコール依存症の家族、そして機能不全家族と呼ばれる家族の下で子供時代を送った人たち」のことになります。しかし、精神医学の枠組みのなかでの診断名や疾患単位ではないため、知っているようでよく分からない概念となっています。
次に、育った「家庭環境」が、その生きづらさの背後にあるといわれています。つまり、過酷な環境を生き抜くため、いたしかたなく身につけた行動パターンのために、大人になってから「生きづらさ」を感じてしまうわけです。それでは、アダルトチルドレンと呼ばれる人たちは、どんな生きづらさを感じているのでしょうか。
ジャネット・ウオイティッツによれば、アダルトチルドレンは、(1) 自分の考えや行動が「これでいい」という確信が持てない、(2) ものごとを最後までやり遂げることが難しい、(3) 本当の感情を押し殺して嘘をつく、(4) いつでも自分を批判する、(5) 他人と親密な関係を持つことが難しい、(6) 常に他人からの受容を求めている、などの特徴を挙げています。自己評価やものごとへの取り組み、対人関係にいたるまで、幅広い生きづらさがあることがわかります。
それでは、アダルトチルドレンは、どのような家庭環境のなかで、どのような行動パターンを身につけてしまうのでしょうか。前回の「母親の抑うつ」でもお伝えしたように、子どもは家庭のなかで自分の失敗や悩みを打ち明けたり、「嬉しさ」や「楽しさ」といった正の感情を表現します。このような安全基地に支えられながら、外の世界を冒険して「チャレンジすること」を学んだり、友達や目上の人との関わり方を身につけていきます。しかし、このような「子どもらしい」時期を体験することなく、子どものころから「大人の役割」を演じてしまうことによって、「アダルトチルドレン」となってしまいます。
今回はアダルトチルドレンの定義とその特徴についてお伝えしました。次回は、アダルトチルドレンが子どものときに演じる「役割」について、そしてその舞台となる「機能不全家族」についてお伝えします。
参考文献 斉藤学 「アダルトチルドレンと家族」 学陽書房.
文:国際医療福祉大学 赤坂心理学科 HIKARI Lab監修 小堀修