私たちの健康を維持、増進する、ヘルスケアにおいて、ロボットが目覚ましく発展するようになりました。なかでも「行動変容」と呼ばれる分野、私たちの習慣を適切なものに改善するプログラム、において、ロボットは必要不可欠です。例えば、睡眠を改善したいとき、運動を継続したいとき、禁煙をしたいときなど、私たちは何らかのアプリを使うようになりました。
それでは、私たちの心のケアに、ロボットは参入できるのでしょうか。
オンラインでカウンセリングを受けるとき、私たちはZoomやSkypeといったテクノロジーを利用しています。そこからさらに進み、ロボットに話を聞いてもらい、一緒に悩んでもらい、解決策を探す、ということはできるのでしょうか。
まず、身近にあるロボットを探してみましょう。
ネコのぬいぐるみが、目の前にあります。やわらかくてさわり心地がよく、寝るときに子どもは抱きしめようとするかもしれません。きっと小さな子どもにとっては、生きたネコと同じく、その (the) ネコであり、他のネコがとって代わることはありません。しかし、大人にとっては「おもちゃ」であり、大量生産されたひとつ (one of them) に過ぎないかもしれません。
ピクサー制作のToy Story 3は、子どもにとってかけがえのない唯一無二のおもちゃが、大人によって取り替えられてしまう悲しみを、おもちゃの視点から見事に描いています。
さて、そのネコのおもちゃに、電池をいれ、スイッチをいれると、ネコは動き出します。子どもは「うわあ」と興奮します。電池が切れて動かなくなると、子どもは「あれー」とがっかりするでしょう。
おもちゃが動き出すことで、「ぬいぐるみ」という概念が「ロボット」にとって変わります。電池が切れたり、壊れたりして動かなくなると、ロボットはぬいぐるみに戻るかかもしれません。私たちの知覚が、ぬいぐるみ (soft toy)、から、ロボット (robot) に、どのように変わったのでしょうか。私たちは何を見て、聞いて、感じたのでしょうか。
電池をいれるまで「ぬいぐるみ」として認識されていたおもちゃ。これが動き出すことに、私たち大人は何を感じるのでしょうか。ロボットの定義にはいくつかありますが、あえて次回からは、「私たちが」何を見てロボットだと認識するのか、について考えてみます。
文:国際医療福祉大学 赤坂心理学科 HIKARI Lab監修 小堀修