前回は、私たちにとってロボットはどのような存在であり、どのような法を守っているのか、という話をしました。今回は「感情を持つ」とはどういうことかを解説していきます。
制御されているはずのロボットが、思いがけない動作をしたら。例えば、ネコのおもちゃが、ものすごいスピードで走って、家から消えてしまう、あるいは、スイッチを入れたら動くはずの動作をしない。このようなとき、単に「故障した」と思うだけかもしれません。子どもたちだったら「怖くて逃げ出したんだ」とか「今日は機嫌が悪くて眠い」など、ロボットを擬人化する、つまり、ロボットが感情を持って生きているかのように解釈するかもしれません。
私たちは、どのようにして、目の前にあるものが感情を持っている、あるいは、持っていない、と判断するのでしょうか。その判断の方法について、3つにまとめてみます。
思考や言語による判断
AIなど実体がないロボットの場合、私たちが観察できるのは、AIが発する言語のみとなります。私たちがうれしいときに一緒に喜んでいるようなテキストや絵文字を返してきたり、私たちが苦しいときはなぐさめるようなテキストを返してきたりするなど、AIが発するテキストや画像に基づいて、ロボットが「感情を持っているか」を私たちは判断することになります。
行動による判断
ここでの行動とは、言語活動を除いた行動で、外部から観察できるものです。例えば、飼い犬がより大きな犬に対して吠えていると、私たちは飼い犬が「おびえている」と解釈したりします。他にも、逃げ出す、近づく、顔の一部を赤らめる、毛を逆立てる、汗をかく、失禁する、といった行動を観察することで、私たちは動物が「怖いと感じている」と解釈します。スイッチを入れても動かないロボットに対して、子どもが「機嫌が悪い」と擬人化して解釈するのは、行動に基づいた判断をしているといえます。
神経心理学的な判断
最後に、脳や神経などの中枢神経の働きに基づいて、感情があるかを判断する、というものがあります。例えば、明らかに恐怖を感じるような状況でも、怖いといった感情を表現しない、つまり、外から観察しても分かりにくい人もいます。しかしながら、fMRIといったスキャナで脳の内部を観察すると、偏桃体がいつも以上に活動していることがわかります。このように、中枢神経の動きに基づいて私たちは、その個体が感情を持っていると判断することができます。
今回は、私たちがどのようにして、相手が感情を持っていると判断するのか、について解説しました。次回からは、私たちヒトが持つ感情やそのメカニズムについてみていきます。
参考文献: Evans, D. (2003). Emotion:A very short introduction. OUP Oxford.
文:国際医療福祉大学 赤坂心理学科 HIKARI Lab監修 小堀修