コロナと病気不安(10)-日本の文化社会と病気不安

July 24, 2020

病気不安に関するコラムも、10回となり、これが最後です。今回は、病気不安を通じて見える日本の社会文化について考えてみます。

病気不安に影響を与える可能性のある日本の社会文化のひとつに、健康志向の高さがあります。いつから健康や公衆衛生に対する意識が高くなったのかはわからないのですが、さまざまな要因が重なったことが推測されます。例えば

•         他の食文化に比べて、和食が健康的であること

•         四季があり、時期によって疾患が変わること (熱中症とインフルエンザ)

•         他の先進国に比べて人口密度が高いこと

•         他国に比べて、医療技術が高いこと

•         他国に比べて、人間ドッグや健康診断が利用しやすいこと

•         「恥」の文化が生み出した「汚いもの」をうまく隠す衛生技術

これらの要因が重なり、私たちは自分や家族の健康に対する意識が高くなったと考えられます。このような健康意識の高さを背景に、コロナウィルスといったパンデミック、原子力発電のメルトダウンなどが引き金となり、私たちの健康不安が高まります。

さらに、住む場所を失う、仕事がなくなる、といった社会経済的な影響により、不安が高まり、これが病気不安を増悪させます。

最後に、日本の医療制度を振り返ると、面白い観点があります。日本は国民皆保険制度があり、健康保険証があれば、どの医療機関にもアクセスできます。また、地域のクリニックは専門分化しており、皮膚科ならここ、耳鼻科ならあそこと、それぞれ病気ごとに行くクリニックが異なります。

このため実質上「かかりつけ医」が存在せず、私たちが子どものときにどんな病気をして、どんなアレルギーがあり、親からどんな遺伝的な影響があるか、そういったことを把握したうえで診察できる機会が限られてしまいます。

病気不安を持っている人は、自分の病歴、服薬、食事、生活スタイル、全てを理解した上で、正確に診断してほしいと願っています。ところが、かかりつけ医ではないため、5分程度の診察で終わってしまい、これが病気不安を持つ人をの不満を高め、「別のクリニックでまた診てもらおう」と、受診を繰り返すことになってしまいます。

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文:国際医療福祉大学 赤坂心理学科 HIKARI Lab監修 小堀修

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