今回は私たちの研究グループ (千葉大学と国際医療福祉大学) が実施した調査の結果について解説します。この調査は緊急事態宣言が出る直前、2020年の3月27日と28日に実施されました。緊急事態宣言が出た後に比べて、コロナウィルスに関する知識や自粛などの行動には個人差が大きいことが推測できます。
20代から60代まで、各年代で400人ずつ、合計2000人が調査に参加しました。すべての都道府県から参加があり、東京都から361人、高知県から12人といったように、各都道府県の人口に合わせて参加人数を決めました。
主な結果として、およそ10%の参加者 (400人程度) が、コロナウィルスのことが全く分からない、と回答していました。このような人たちほど
o コロナウィルスに感染することを心配していない
o 感染したら重症化することを心配していない
o 感染していたらコロナウィルスを他者に感染させてしまうこと心配していない
という特徴がありました。さらに、コロナウィルスに関して理解がないほど
o 手洗いやアルコール消毒をしない
o マスクをしない
o 混雑した場所を避けない
o 咳やくしゃみをする人を避けない
と回答していました。すると、知識や理解がないことで、コロナウィルスに感染しやすくなり、知らないうちに他者にコロナウィルスをうつしやすくなります。そこで私たちは、コロナウィルスに関する知識や理解がない人たちがいるのか、明らかにしようとしました。コロナウィルスに関する知識や理解がない人たちは
o テレビ、ラジオ、SNSなどの情報にアクセスしない
o 情報源に信憑性がないと判断しやすい
o もともと自分が病気になる確率が低いと信じている
ということが明らかになりました。普段から情報収集する習慣がないだけでなく、目にした情報が信じられません。メディアにさまざまな情報が飛び交うようになり、どの情報を信じていいのか分かりにくいのかもしれません。また、自分が病気になるリスクを低く見積もりすぎて、楽観的に考えすぎているといえるかもしれません。
このような人たちに正確な情報を伝え、適切な予防行動をとってもらうために、私たちは何ができるでしょうか。
Shiina,A., Niitsu, T., Kobori, O...Iyo, M. (in press). Relationship between perceptionand anxiety about COVID-19 infection and risk behaviors for spreadinginfection: A national survey in Japan. Brain, Brain, Behavior, & Immunity -Health.
文:国際医療福祉大学 赤坂心理学科 HIKARI Lab監修 小堀修