コロナ禍におけるギャンブル問題 ~パチンコとオンラインカジノを中心に~

May 31, 2020

ここ最近の新型コロナウイルス関連のニュースで話題にあがった場所の一つと言えば、パチンコ店があるのではないでしょうか。都道府県知事による休業要請にも関わらず営業を続ける一部の店舗と政府の外出自粛要請にも関わらず店に行く一部の客がクローズアップされ報道されていました。その関連で、ギャンブル問題やその依存症も話題にあがっておりましたので、今回は身近な存在でどこにでもあるパチンコ店と統合型リゾート整備推進法(IR法)で注目されたカジノの2つをピックアップして、ギャンブルとその依存問題を取り上げていきたいと思います。 

大前提として日本では、ギャンブル(賭博)は刑法により違法とされています。ただし、刑法の例外条文や別法等により“合法的あるいは違法性が問われていないギャンブル”が多数あります。例えば、代表的なものに公営競技(競馬・競輪・競艇・オートレース)や宝くじ、お祭りなどでよく見る射的…そして、日本全国至る所にあるパチンコ店があります。

まず、パチンコ・パチスロについてです。パチンコ・パチスロ各業界団体は、パチンコ・パチスロは“遊技”と位置付けていますが、その遊技には、“依存(のめり込み)”の可能性、すなわち「依存(のめり込み)の状態を続けるとパチンコ・パチスロをしたいという気持ちを全く抑えることができない、やり始めるとコントロールができないなど病的な依存状態に進行する可能性」があると注意喚起しています1)。

公益財団法人日工組社会安全研究財団の調査によると、パチンコ・パチスロ遊技人口は約1,100万人で、その内、“パチンコ・パチスロ遊技障害(過度ののめり込み)”の疑いは、直近1年で約40万人と推計しています2)。なお、同調査では“パチンコ・パチスロ遊技障害”の上位概念に、“ギャンブル障害(Gambling Disorder)”を位置付けています。“ギャンブル障害”とは、アメリカ精神医学会(APA)が2013年に改訂したDSM‐Ⅴ(精神疾患の診断・統計マニュアル)において、アルコールや薬物依存症と同じ「物質関連障害および嗜癖性障害群」のカテゴリーに分類された障害です3)。

厚生労働省下の調査によると、パチンコ・パチスロも含めた“ギャンブル等依存症”の疑いは、直近1年で約70万人、生涯では約320万人と推計され、最もお金を使っていたギャンブル先は、パチンコ・パチスロだという結果がだされました4)。

“ギャンブル等依存症”とは、2018年に施行されたギャンブル等依存症対策基本法の中で、「ギャンブル等(法律の定めるところに行われる公営競技、パチンコ屋に係る遊技その他射幸行為)にのめり込むことにより日常生活又は社会生活に支障が生じている状態」と定義された用語です5)。

次にカジノについてです。政府は、日本に合法的なカジノを建設するための一歩として、2016年にIR法を施行させました。まだカジノが実際に建設されるのは先の話となりそうですが、実はカジノは日本国内で気軽に行うことができます。

それは、“オンラインカジノ”です。インターネット回線が繋がるパソコンあるいはスマートフォンがあれば自宅で気軽にギャンブルができます。海外のカジノ合法国で運営されているオンラインカジノサイトに自分で登録し、自分でギャンブルをする分には、その違法性は今のところ問われていないようです(ただし合法でもありませんので絶対に逮捕されないわけではないみたいです)。このように法律のグレーゾーン問題やIR法によるカジノへの認知度の高まり、そして、インターネット利用の普及、コロナ禍における自宅待機の影響で、オンラインカジノの利用増加およびそこへの依存リスクも相対的に高まってくると考えられます。 

「遊技だから」や「合法だから、違法性が問われないから」といったように名称や法の側面だけに着目すると、自分の行動を正しく評価できなくなってしまうかもしれません。少しでも自分の行動を客観的に見るために、ギャンブル愛好家と病的ギャンブラー(ギャンブル依存症者)を峻別できるとされる簡単なテスト(LOST)が、2018年に発表されたので、参考までにご紹介したいと思います6)。

直近1年間の自分のギャンブル経験に当てはめて、2つ以上の質問に「はい」なら、ギャンブル依存症のリスクが高いとされています。

1)ギャンブルをするときには予算や時間の制限を決めない、決めても守れない

2)ギャンブルに勝ったとき「次のギャンブルに使おう」と考える

3)ギャンブルをしたことを誰かに隠す

4)ギャンブルに負けた時にすぐに取り返したいと思う

いかがだったでしょうか?もし、依存症のリスクが高いかなという場合は、ギャンブル以外の趣味・活動を広げましょう。緊急事態宣言も段階的に解除・緩和が進んできましたので、新型コロナウイルス感染にも引き続き気をつけながら、今まで出来なかったことをしてみたり、何か新しいことにチャレンジしてみるのもいいかもしれません。

 

参考文献

1)パチンコ・パチスロ産業21世紀会.パチンコ・パチスロへの依存(のめり込み)問題 http://www.anshingoraku.link/izon_nomerikomi.html(2020年5月17日閲覧)

2)公益財団法人日工組社会安全研究財団.パチンコ・パチスロ遊技障害 研究成果中間報告書2020年

https://www.syaanken.or.jp/?p=11265(2020年5月17日閲覧)

3)高橋三郎・大野裕(監訳).DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引.医学書院,2014.

4)松下幸生・樋口進.ギャンブル障害の疫学調査、生物学的評価、医療・福祉・社会的支援のありかたについての研究.障害者対策総合研究開発事業(国立研究開発法人日本医療研究開発機構), 2017.

5)厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部 精神・障害保健課 依存症対策推進室.ギャンブル等依存症対策基本法について

https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000371108.pdf(2020年5月17日閲覧)

6)田中紀子・松本俊彦・森田展彰・木村智和.病的ギャンブラーとギャンブル愛好家とを峻別するものは何か : LINEアプリ・セルフスクリーニングテストを用いた病的ギャンブラーの臨床的特徴に関する研究.日本アルコール・薬物医学会雑誌, 2018, 53 (6), pp264-282.

 

文:阿相周一

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