新型コロナウイルス感染拡大により非常事態が宣言され、学校が休校となり、多くの子供たちが自宅で過ごしていると思います。外でスポーツや運動を思う存分できないので、暇つぶしとして、またストレス発散として、コンピューターゲーム（以下、ゲーム）やインターネットの使用に多くの時間を使っているかもしれません。
今回は、ゲームやインターネットの使用とこれらの“依存症”を紹介していきたいと思います。まず、依存症とは、依存対象の「コントロールの障害」で、その起因は「脳（脳内報酬系）の機能不全」とされています。例えば、依存対象をある程度、持続的・反復的に使用していると、「控えよう」とか「もう止めておこう」と思っても、自分の意志でコントロールすることが難しくなってしまうことがあります。また、依存症はアルコールや薬物といった物質依存とゲームやインターネット、ギャンブルなどといった行動嗜癖（プロセス嗜癖）に大きく分けられます。ここでは、わかりやすくするために社会一般的に浸透している言葉“依存症”をゲームやインターネットにも使っていきます。
2018年の総務省統計によれば、13歳から19歳までのインターネット利用率は、96.6％であり、同年齢群のソーシャル・ネットワーキング・サービス（SNS）の利用率は、75.0％でした１）。また、2019年の厚生労働省研究班の調査によれば、10歳から29歳までの過去12か月間におけるゲーム機、PC、スマートフォンのゲーム使用率は、85.0％でした２）。このように、多くの子供がゲームやインターネットを使用しています。
ゲームとインターネットの“依存症”は、世界保健機関（WHO）が2019年に改訂したICD‐11（疾病及び関連保健問題の国際統計分類）において、初めて「ゲーム症（障害）」として病名に加わりました３）。また、アメリカ精神医学会（APA）が2013年に改訂したDSM‐Ⅴ（精神疾患の診断・統計マニュアル）においても、正式な診断名ではないものの今後の研究の病態として、「インターネットゲーム障害」が記載されました４）。このように、ゲームやインターネットの“依存症”は、まだ更なる研究が必要と思われますが、国際的に注目されています。
日本では、2020年4月1日に、初めて香川県が「ネット・ゲーム依存症対策条例」を施行し、18歳未満のゲームとスマートフォンの使用時間の目安を設け、保護者に子供と話し合い家庭内でルールを作る等の努力義務を促しました５）。この条例は、主にその制定過程や使用時間の根拠が、様々なメディアで報道され全国的にも話題となり、ゲームは1日60分といった使用時間のみが一人歩きしているように感じられます。
コロナ禍では、外出が大幅に制限されている以上、自宅でのゲームやインターネットが子供たちのストレス発散法の一つになっているかもしれません。したがって、親が過剰な使用禁止や制限だけを加えると、もしかしたら子供のストレスが高まってしまうかもしれません。子供が適度に楽しくゲームやインターネットを続けるためにも、そして、将来的に“依存症”リスクを予防するためにも一つの方法をご紹介します。
１）親がいきなりゲーム機やスマートフォンを取り上げ叱ったり、一方的に厳しいルールを押し付けたりしない。
２）使用する時間や使用する場所などのルールを子供と一緒に話し合う。いきなりハードルが高いルールを作らなくても、最初は「ゲームは親と一緒に楽しむ」や「親がいる居間でインターネットをする」などといったことでも良いと思われます。
３）ゲームやインターネット以外の活動時間を増やす。子供との会話や一緒に遊ぶ時間を増やすことやスポーツ、散歩、工作、音楽、料理などといった楽しみや趣味、ストレス発散できる時間を増やしてみてください。また、新型コロナウイルスに気をつけながら、「何ができるか」ということを子供と一緒に考えていくプロセスも大切にしてみてください。
参考文献
１）総務省．情報通信白書 令和元年
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/r01.html（2020年5月5月閲覧）
２）依存症対策全国センター．ネット・ゲーム使用と生活習慣についてのアンケート結果
https://www.ncasa-japan.jp/docs（2020年5月5日閲覧）
３）World HealthOrganization. Gaming Disorder
https://www.who.int/news-room/q-a-detail/gaming-disorder（2020年5月5日閲覧）
４）高橋三郎・大野裕（監訳）．DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引．医学書院，2014.
５）香川県議会．発議案第一号 香川県ネット・ゲーム依存症対策条例議案
https://www.pref.kagawa.lg.jp/gikai/（2020年5月5日閲覧）
文：阿相 周一
