ここ数年、よく耳にするようになった、Highly Sensitive Person(HSP)とは、心理学的にどのような人なたちのでしょうか。この言葉は1997年に生まれたにも関わらず、最近になってよく使われるようになったのはどうしてか、合わせて考えてみます。
Highly Sensitive Person は、生まれ持った特徴で、強い感覚刺激を不快だと評価する傾向があります。このため、大きな音に圧倒されたり、カフェインや、さまざまな痛みを避けようとします。
一方で、繊細な香り・味・音・芸術作品を好み、このことが豊かな内面生活を可能にしていると想定されています。感覚器が敏感であるため、繊細な香り、料理、音楽、芸術作品を好む、ということは理にかなっています。ところが、このことが「内面生活を豊かにする」というのは、少し飛躍しているような気もします。他の人よりも小さな刺激を好んだとしても、私たちの内面が豊かなのかどうかは、あくまで、その人の主観だからです。
例えば、胃腸を痛めて、味の薄い物しか食べられなくなり、微妙な味の違いがわかるようになったとします。それを肯定的にとらえて、私の内面が豊かになった、という人もいるかもしれませんが、そのように考えない人もいるでしょう。
HSPという言葉が流行った理由のひとつは、おそらく、この「内面生活が豊かだ」と言い放ったことなのではないかと推測できます。あくまで繊細で敏感だ、故に不安になりやすい、落ち込みやすい、というだけでなく、そこに積極的な価値を持ち込んだことが、「HSPは自分に当てはまる」と思った人を惹きつけているのではないでしょうか。
間接的にこの裏づけとなるのが、過去に開発されたパーソナリティモデルです。少し専門的な内容になってしまいますが、アイゼンクの開発した内向性と神経質傾向の組み合わせと、グレイの開発した行動抑制系といったモデルは、その理論背景が、ほとんど感覚処理感受性 (sensory-processingsensitivity) と同じです。しかし、彼らのモデルには、「内面生活が豊かだ」といった積極的な特徴はないため、研究者の関心を大きく引きつけても、そのモデルに当てはまる人たちは、そこまで引きつけられなかったのかもしれません。他にも、HSPの人は、以下のような特徴を持つと言われています:
o 優れた良心の持ち主で裏切り行為をしない誠実さ
o 愛情や喜びをより深く感じ取る
o カウンセラー・教師・ヒーラーへの高い適正
o アート・音楽などの美の理解、独創性が豊か
o 危機を早期に察知する能力
o 環境問題への関心の高さや、動物への優しさ
o 直観が鋭く、スピリチュアルな体験をすることも多い
文:宮崎大学 HIKARI Lab監修 小堀修