♪どんな色が好き?
という歌がありますが、皆さんはどんな香りが好きでしょうか?すぐに「これが好きだ」と言える人もいれば、生活を振り返って、どんな香りがあるか探す人もいるでしょう。いくつか具体例を出してみます。誰もが好む香りもあれば、かなり個性的なものまであります。
柑橘系のフルーツの香り
カレーなどスパイスの匂い
新しい教科書を開いたときの紙の匂い
ピアノを開けたときの木の香り
車に乗った時の座席の匂い
アルコール消毒の匂い
新しいサッカーシューズの匂い
赤ちゃんの頭皮の匂い
ネコをブラッシングした後の毛の匂い
マッチを擦ったときの匂い
などがあります。乾燥まで終わった洗濯物もいい匂いがします。これは「乾燥」を匂いとして感じているそうです。ジメジメした夏に、エアコンを入れたときに気持ちがいいのは、肌感覚だけでなく、嗅覚でもドライな空気を感じているのかもしれませんね。
同じ香りでも、快と不快に、意見が分かれたり、年齢によって好みが変わることももあります。
味噌ラーメンは美味しそうな匂いがしますが、西欧で育つと味噌や納豆の匂いが苦手になる場合もあります。金木犀やラベンダーの香りは、トイレの芳香剤のようで苦手だという人もいます。バラの香りは、ほのかには心地よいが、強すぎるときつい、という人もいます。
香り、匂い、臭い、という言葉は、私たちの生活で、どのように使われているのでしょうか。
香りはAroma、匂いはSmell、臭いはOdourと英訳されるように、香りは快が強く、臭いは不快が強く、匂いはその中間という感じでしょうか。
「臭うぞ」という使い方をするように、犯罪の予感がするときにも、「嗅覚が働く」ことがあります。サッカーで「ゴールの臭いを嗅ぎ分ける」など、ポジティブな文脈で使われることもあります。
また日本では「臭わない」ことがポジティブに評価されることもあります。臭いがないということは、何となく、清潔で病原菌がなく、手入れが行き届いている感じがするのでしょう。逆に、思春期のいじめで最もよく使われる言葉は「臭い」「臭う」で、これらはターゲットを貶める表現として使われています。
このいじめと関係があるのかは定かではありませんが、日本独特の精神病理学に、自己臭恐怖というものがあります。自分から嫌な臭いがして、これが他者を不快にしている、という思い込みから、社会的な状況で苦痛を感じたり、他者との交流を避けてしまうという症状です。
日本には、自分の匂いを測定して分析してくれるサービスもあるらしいのですが、この結果が「限りなく無臭」であったとしても、自己臭恐怖がある人は納得できず、他者を避けてしまいます。どうしても外出しなければならないときは、歯を磨きまくったうえで、強い香水を振りかけます。香水の強い香りで逆に他者の注意を引いてしまい、「やっぱり自分は臭うのかな」と思ってしまいます。なお、このような恐怖は、日本だけでなく、先進国諸国でも確認されてきています。
参考文献
松尾 祥子 (著), 東原和成 (監修). プロカウンセラーが教える香りで気分を切り替える技術 ~香りマインドフルネス. 翔泳社, 2020.
文:宮崎大学 HIKARI Lab監修 小堀修