「肥満」と言えなくなる日がくる?肥満と肥満症との違い

September 1, 2021

嫁、家内、など、結婚した女性は家にいる、というステレオタイプを支持するような表現があります。これらの表現は現代の性役割と必ずしも合致しないため、いつか消えてなくなるかもしれません。また、JIS規格の履歴書には、性別を書く欄がなくなるそうです。男女という分類も、いつかなくなるかもしれませんね。

同じような表現に「肥満」があります。もともとは「食事に困っていない満たされた人」という意味で、江戸時代や戦時下においてはポジティブな意味合いを持っていたことが予想されます。ところが現代では「食べるものが余る」ことが問題になっており、およそ3割の食料が食べられることなく廃棄されています。

 

このような時代の変化に伴い、肥満という言葉の響も変わってきました。今回からは、私たちが肥満という言葉に何を感じ、考え、行動するかについて取り上げます。

 

その前に、人間の食行動について、話を始めましょう。もとより人間は雑食で、75%はフルーツと葉、25%は肉や魚を食べていました。異なる種類の食べ物を少しずつ食べるのは、食中毒の被害を減らす、栄養失調を防ぐ、という利点があるからです。また、どの文明でも、体を温める食べ物 (生姜、鶏肉、アルコールなど)と、体を冷やす食べ物 (キャベツ、セロリ、ミルク)、の2種類を食べていました。

 

さらに人間は、「必要以上に食べる」能力を受け継いでいます。体に脂肪を蓄えることで、飢饉を乗り越えるためだと考えられています。食物が不足しないけれど、必要以上に食べることができるため、現代の私たちは「太りやすい」状況におかれています。

 

それでは、どこからが「太っている」ことになるのでしょうか。学術的/医学的には、BMIという指標が主流です。BMIは、体重(kg)/身長(m)x身長(m)で計算される値です。170cmで65kgの人であれば、65/1.7x1.7=22.5となります。

 WHOは、BMIが30を越えると肥満と定義しますが、日本では、BMIが25以上を肥満としています。この25や30といった数値はどのように設定されたのでしょうか。日本人の場合、BMIが25以上の人ほど、糖尿病(2型)や、心臓の疾患、脳の疾患のリスクが高まります。このような内臓の疾患だけでなく、腰痛、関節痛、睡眠時無呼吸症候群などのリスクも高くなります。このような肥満によって生じる健康問題は、肥満症と呼ばれています。

つまり、現代において、肥満という言葉は、肥満症を予防するために定義され、用いられています。ところが、どうやら肥満という言葉が一人歩きして、肥満に該当する人、さらには肥満に該当しないけれど肥満に見える人に、私たちはあるステレオタイプを持っていることが明らかになってきました。次回は、私たちが「肥満」あるいは「太っている」ことに、どのような意味づけをしているのか、いくつかの知見をお伝えします。

文:国際医療福祉大学 赤坂心理学科 HIKARI Lab監修 小堀修

ココロワークスとは?
一人ひとりに寄り添って
悩みの解決・軽減を目指す
オンラインカウンセリングです

ご予約はこちらから