私たちが持つ「肥満」へのステレオタイプ

September 8, 2021

もともと肥満には、食べるものに困らず満たされている、という語源があります。食べ物が過剰に供給される現代では、肥満という言葉にはネガティブな響きがあります。医学的にはBMIが25以上のことが肥満と定義され、肥満によって医学的問題が生じていることを肥満症と呼びます。

 

日常的には、このような医学的な定義を意識せず、「太っている」と「肥満」は同義で使われています。このような表現を使うとき、身長に対する体重の数値が大きい、という事実に、私たちはあるステレオタイプを追加しているようです。ある人が肥満である、太っていると表現されたときに、その人はどんな人だと思うでしょうか。

 

身近にマンガがあれば、太っている登場人物を探してください。子どもでも大人でも構いません。次に、その登場人物がどのように描かれているか、注意深く読んでみてください。多くの場合、太っている登場人物は、他の登場人物に比べて、動作が遅い、例えば、走ることが苦手、運動が苦手、集合に遅れる、といったように描かれています。動作だけなく、知的に劣っているように描かれる場合もあります。意思決定や判断が遅かったり、よりあからさまに、テストの点が低かったりします。

 

これらは太っている人に対する典型的なステレオタイプと言えます。実際、親も教師も、太っている子どもの方が知的に劣っているだろうと判断することが、研究によって検証されています。医師や看護師、心理師も、肥満の患者は、遅刻しやすい、服薬を順守しにくい、医療者に対して敵意を持ちやすい、というステレオタイプを持っていることが分かりました。

 

このようなステレオタイプは、太っている本人に、どのような影響を与えるのでしょうか。例えば、太っている子どもは動作が遅い、知的に劣っている、と思いながら教育する場合、よりいっそう、その子のことをケアするかもしれません。ところが当人は「期待されていない」「自分は低レベルのことしかできない」と受け止めてしまい、実際に学力が下がってしまったり、少しずつ自分に対する自信を失っていくかもしれません。

 

ステレオタイプにとどまらず、本人に「肥満」であること「太っている」ことを伝えると、どうなるでしょうか。全く気にしない、ということは珍しく、多くの場合「やせなければならない」と思い、やせようと努力しようとします。ところがダイエットや生活習慣病の予防が難しいことが示しているように、すぐに体重を落とすことはできません。

さらに、太っていることをからかったり、体型のことでいじめを受けると、傷つき、落ち込み、なんとか気持ちを立て直そうと過食することで、より体重が増加することがわかっています。

 

私たちがすぐにできること…それは、肥満に対するステレオタイプをリセットすることです。体型と、人柄や能力に、直接的な関係がないことを思い出しましょう。また「肥満」「太っている」とは別の表現がないか探してみてください。Overweight, Unhealthy Weight など、事実をそのまま記述するような英語がヒントになるかもしれませんね。

  

Pont, S. J., Puhl, R., Cook, S. R., & Slusser, W. (2017). Stigmaexperienced by children and adolescents with obesity. Pediatrics, 140(6).

 

文:国際医療福祉大学 赤坂心理学科 HIKARI Lab監修 小堀修

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