私たちの健康を維持、増進する、ヘルスケアにおいて、ロボットが目覚ましく発展するようになりました。私たちの心のケア、メンタルヘルスのケアに、ロボットは参入できるのでしょうか。
お酒を飲むと気分がよくなる人もいれば、アレルギー反応をおこして気持ち悪くなる人もいます。今回は、私たちの感情に影響をあたえるもので、私たちの「外側」にあるものについて考えてみます。
私たちの気分を変えてしまうものには、何があるでしょうか。最も短時間で確実に影響を及ぼすのは、お酒、違法薬物、脱法ハーブ、そして精神科で処方される向精神薬などです。これらは、私たちの中枢神経に働きかけ、不安を和らげ気持ちを穏やかにしたりします。ところが、使いすぎたり、使い方を間違えると、離脱症状に苦しんだり、特に違法薬物のなかには、苦痛な幻覚を引き起こすものもあります。
私たちは、音楽を聞いて楽しい気分になったり、また、悲しい気分になったりします。気温が暑すぎるとイライラしたり、寒すぎると不安になったりもします。このように、料理や音楽など、味覚や嗅覚、聴覚に働きかける刺激や、適度な温度と湿度などの皮膚感覚も、私たちの気分に影響します。
美しい絵や風景などは、私たちの気分をよくします。ところが、同じものを見ても「美しい」と思う人もいれば、「つまらない」と思う人もいるでしょう。このように、「美しい」という判断は主観的であるがゆえに、視覚が私たちの気分に影響するメカニズムは、より複雑になります。その人が持つ「感性」、つまり、記憶や判断の総合的な働きによって、私たちは何かを美しいと感じるためです。
このような感情の仕組みを、ロボットにプログラムすることはできるでしょうか。パソコンを涼しい部屋に保管するなど、適度な温度や湿度がロボットの状態をよくすることは明らかです。また、質のよい電池がロボットを長持ちさせたり、よりよい働きをさせたりします。このように、環境やエネルギーの摂取については、ロボットと植物、人間で共通するところが多いかもしれません。
通常は100Vの電圧で動くロボットを、ヨーロッパに旅行に行くなどして、200Vの電圧で充電したところ、「酔った」かのような大胆な動作をしたかと思えば、そのあと「二日酔い」のように役に立たなくなってしまう…そんなロボットなら作れるかもしれません。一方で、何かを美しいと感じて、気分がよくなり、よりよい働きをするロボットを作るためには、とても複雑なプログラミングが必要となりそうです。
今回は、私たちの感情に影響をあたえるもので、私たちの外側にあるものをいくつか紹介しました。次回は、私たちの注意、思考、記憶といった「認知」が、どのように感情に影響するのか、私たちの内側に目を向けて見ましょう。
文:国際医療福祉大学 赤坂心理学科 HIKARI Lab監修 小堀修